「バカと無知」 橘玲

 

攻撃を受けた時生き物はまず逃げようとし、無理なら反撃、それも無理な絶体絶命なら

体温と心拍数をさげ胃や腸内のものを排泄し意識を失い「死んだふり」をする。

それは一般に捕食者は死んだ動物の肉を食べないからだそうだ。

すごく危機的状況で気を失ったりおしっこを漏らしたなど聞くのは自然な摂理だったのだ。

へ〜。

 

最近正義を振り翳して自分とは何のつながりもない他人をSNSで叩くことが

よくあるがその仕組みがよくわかった。正義は娯楽のようなものと感じるらしい。

自分より優れたものは「損失」、劣ったものは「報酬」と感じるように進化の過程で

設計されたから、上位を引き摺り下ろすことは脳の報酬系を刺激し自尊心を高める効果が

あり、ワイドショーなどでコメンテーターと一緒に義憤に駆られセレブの不品行に

誹謗中傷など書き込みいい気分になったりするそうでだ。

 

見ず知らずの相手の発言を評価する時に、私たちは実績よりも「自信」を

参考にするらしくどれほど馬鹿げた主張でも自信たっぷりに言われると

思わず信じてしまう。逆に自信なさげだと正しいことも信じてもらえないということか・・

 

強い集団に属していると自尊心は高まり、弱い集団だと低くなる。

自尊心の高低は個人主義集団主義に関係している。自尊心が高いと自分の能力を

生かすことで、自尊心が低い人は対人関係のスキルを磨くことで危機を

乗り越えようとするらしい。自尊心が高いと好感度が低くなり、自尊心が低いと

好感度が高くなる傾向がある。アメリカ人は自尊心が高く、日本人は低いというのも

個人主義的な文化では自尊心が高いことが評価され、集団主義文化の日本では

周囲とうまくやっていくことが重要とされるからではないかとのこと。

最近あさイチで稲垣えみ子さんがでていた。以前のものに囲まれた都会的で快適な

暮らしと棄て今は電気もほぼ使わずガスもなく風呂もなく最低限のものだけでの

ミニマルな暮らしを実践しているのだが、その生活になってから周囲の人に

ナイスにするようになったと言っていた。なぜならみんなに助けられながら

生きていかなければならないからと言っていてこの本を読んでいたら思い出した。

集団的な面倒なお互いのサポートをお金が解決している部分(お金で済ませる)もあるので

金持ちは利己的、貧乏人は利他的というのも納得。

ボランティアに人気があるのも善意の名を借り無力の人をサポートすることで

自尊心の低い人にとってそれを引き上げることができるからではないかともあり

それも何となく納得。

 

偏見を持つなと言われると無意識に考えてしまいそれを意志力で押さえつけ

消耗するので作業が終わると押さえ込んでいた偏見が表に出てきてしまう、

「思考抑制のリバウンド効果」と呼ぶそうだが、甘いものを食べてはいけないなどの

思考に対しても返って考えることになるので危険なのね。

 

とても面白く興味深い本だった。