フェミニズムの視点から経済を語った本。
アダム・スミスが本を執筆できたのは彼の母親がせっせと食事を作ったり
彼の身の回りの世話をして執筆に専念できたからだというところから
話が展開していく。
子供の話と思っていたロビンソン・クルーソーが意外に自己中マッチョだったり
するのも知れて面白い。
ナイチンゲールも実務能力やリーダーシップもあり衛生環境の改善による
兵士の死亡率変化もデータを活用して反対派に説得して回る行動派だったそう。
当時看護の仕事は教育のない貧しい女性がやるものという偏見があったらしく
裕福な家の出身の彼女は家族に反対されたが帰国後は国民的スターになった。
俯きがちで献身的な女性のイメージがある彼女だが実際には手厳しい批評家で
あり看護が神聖な仕事でもお金を受け取っていけないわけがない、むしろ
お金という手段がどうしても必要だと説いた。
ケアというのは経済とは関係なく女性の体から湧いてくる資源といつしかされ、
社会は古くから女性に特定の活動を押し付け、女性の活動に経済的価値を
認めないことにした。男性の経済活動を支えるため女性はケアや共感、献身や
配慮を引き受けなくてはならなくなり、だが世の中で価値があるのは経済だけという。
「経済理論は社会を支配するロジックとなり、女性の役割は経済の役には立たないものとし
しかし経済のためになくてはならない土台としてそこに固定された」というように
ケアという仕事は経済活動ではないという考えが基本にはあるため
給料が安かったり軽んじられる仕事になってしまったのだろう。
このことが貧困とジェンダーの問題にも関連する。
女性はケア産業に関わることが多いため必然的に低収入になると。
この本を読んで日頃から不思議に思っていた重労働である介護の仕事などが
低収入である理由の一端がわかった気がして興味深かった。