「悲歌 エレジー」 中山可穂

悲歌  エレジー

悲歌 エレジー


写真家について勉強していたが、その先生に恋をし心身のバランスを
崩すほどのめり込み写真も恋も諦め、今は渋谷のゲーセンで雇われ店長をする女性が
美しい女子高生2人組を目撃する。心惹かれて久しぶりに彼女達を撮りたいと思う。
やがて彼女達が巻き起こす悲劇とそれにまつわる話を隅田川を背景に描く「隅田川」


バブルの香り残る千葉のうらぶれた場所にあるリゾートマンションの一室が
ある出版社の保養施設となっている。そこで一部で熱狂的に支持されている
ある怪奇小説の作家が不審の死を遂げた。彼の評伝を書きたいと思ったライターの
「私」はそのマンションに篭り執筆をしながら、彼の足跡を辿っていく。
やがて彼女が知りえたものは・・燃えさかる愛と嫉妬、絆を描く「定家」


敬愛する音楽家に弟子入りし、非業の死を遂げた彼の子供たちを
時に父のように兄のように寄り添い慈しみ一緒に時を過ごしていく博雅。
やがて彼らは大人になり、姉の逆髪はギターの才能を、弟の蝉丸は歌の才能を
発揮してバンドを結成する。やがてデビューをした彼らは認められつつあるときに
博雅の結婚を機に突然失踪してしまう。精神的にもダメージを受けた博雅は
抜け殻のようになってしまう。やがて徐々に回復していった彼に
献身的に尽くしてくれた恋人と新婚旅行の地アンコールワット
待っていたものは・・強く相手を想い、願い、ひきつけあう者達の話「蝉丸」



タイトルの示すごとく、どの話もほろ苦くて、でもどこか幻想的で美しい大人の話だ。
中山可穂の作品は「弱法師」と「ケッヘル」くらいしか読んだことがないのだが
いつも濃厚で面白いと思う。でも手が伸び難いのは、彼女の話は女性同士の恋愛の話が
多くてなんとなく苦手な感じがするのだ。読めばそれほど抵抗感もなく読めたりするが
やはり敷居は高いな・・・


彼女は可愛げのある一途な男の人を描くのが上手だ。
蝉丸も博雅もあまりに無邪気に相手を慕っていることをストレートに告げるので
読んでいてもドキッとする。ふと漏らす相手を思いやる言葉や求める言葉は
心構えがないときほど不意打ちに突き刺さる。
なんでこんなに可愛い男性を描けるのだろう。


「蝉丸」で母親が自殺をして、その流血する姿を見ながら、懸命に「ピエ・イエス」を
蝉丸が歌い続けるというシーンがあるのだが、読みながら歌を聴きたくなり
すぐにipodに電源をいれsearchしたら曲が入っていた。
便利な世の中だわ〜。