「女ひとり 世界に翔ぶ − 内側からみた世界銀行」 小野節子

女ひとり世界に翔ぶ ― 内側からみた世界銀行28年
仕事でたまに接する世界銀行の人は強引に自分の考えを通そうとする人が多く感じるので、そんな海千山千の人の集まるところで働く人はどんなだろうと思い、新聞の書評で読んでから気になっていた。

小野節子は名門の家出で、父は銀行家、祖父は元日興銀総裁、曽祖父は安田財閥の創始者で、姉はオノ・ヨーコである。人間関係が日本の中枢の人々で、世界銀行に就職するときの推薦人も東京銀行の頭取だったり、大蔵省関係からの推薦が必要だった米州開発銀行に行くときは、友人の夫であった当事大蔵大臣だった橋本龍太郎!である。
兄や姉はみんな学習院だったが、彼女は語学の必要性を感じた両親が聖心を選ばせた。若い頃から語学に親しみ、留学もしていてイタリア人と結婚した彼女でも世界銀行での生活はかなり苦労が多かったようだ。言葉の問題というより文化や習慣的なものだろう。かなりがんばって働きいい成果も上げたが、人間関係でつまずき、米州開発銀行に出向する。
日本人で女性、しかも大蔵省や外務省やらの組織から派遣されたわけではない彼女は孤立しがちでかなり苦労も多かったようだ。どちらの銀行でもつらい思いをかなりすることになり、読んでいても痛々しい感じがしたが、救いは夫の愛に彼女が支えられていて安心する。

アメリカの考え(自由化、民営化、規制緩和、政府の縮小など)をどの国にも押し付ける風潮が最近の国際開発機関にはあるが、政府の弱い発展途上の国にはかえって逆効果になるという話や、なぜ途上国への融資や援助が難しいかなどがよくわかった。

そしてどこの世界でも仕事の能力が低くても政治力のある人が出世をするという事実を再確認した。私の会社でもいるんだよな〜。

マネジメントのカルチャーが日本と違い、「業務のすべての責任を一手に握り、協力なリーダーシップを発揮して独裁的に振舞うことが要求される」というのもなるほどと思った。日本もその傾向にある。ブッシュしかり、小泉さんしかり、わが社の上司しかり。

つらいことが多い彼女だったが、すばらしいご両親の家族愛に恵まれ幸せに育てられたのがとても嬉しい。