「妖説 源氏物語 弐」 富樫倫太郎

妖説 源氏物語 弐 (中公文庫)
光源氏の息子 薫と匂宮が平安時代の闇に潜む事件に挑むシリーズ2弾。


匂宮の賭博仲間の馬寮の頭が大納言からもらった贈り物は呪いの蛇酒で、呪いの転嫁を大納言が計ったものだった。その呪いの蛇酒には貧しい一家の悲しい歴史があった「蛇酒」


今は亡き源氏と藤壺の女御の不義の話を匂宮が薫に語って聞かせる「藤壺」


出家をしようかと思い悩む薫が宇治深くに暮らし「俗聖」と呼ばれる八の宮に相談しようと向かった山で道に迷い風情のある田舎家に泊めてもらうことになるが、夜にふと起きた薫はその家は人食いの魔物の住む家と知る「宇治の闇」


呪いの転嫁事件で一度は大納言に殺されそうになった馬寮の頭が快気祝いの宴を催し薫と共に参加した匂宮。大納言に多額の借金が弱みの馬寮の頭だが、借金を自分の得意の双六で匂宮が取り戻して復讐してやると言い出し、大納言と匂宮は対戦することに。匂宮の圧倒的勝利に終わるかと思った勝負が途中から妖しくなる「魔の刻」


「宇治の闇」はちょっと切ない物語で気に入った。
人食いの醜い牛鬼は、もとはさる大納言の孫で皮膚病を患っており、陰陽師の勧めで家から出され旅に出たが、あちこちで善行を施し宇治の長者と言われていた。お金も尽き家に帰る途中、盗賊に襲われ身包みをはがれ、醜い容貌で食事も恵まれず石をぶつけられたり、あざけりの言葉を投げかけられたり、辛く無念な気持ちを抱えたまま、屍を荒野に晒すことになった。そして牛鬼となってしまうのだが、その話を薫にしてくれた僧は以前彼と一緒に善行を行っており、変わり果て姿に心を痛めている。


平安時代あたりの哀しい話は物語らしく、でも適度にリアルだったりしていいわ。