「三四郎はそれから門を出た」三浦しをん

三四郎はそれから門を出た
本屋では本の並び順にも目を光らせ、平台に積まれた雑誌が崩れていたら、頼まれもしないの即座に直す。そんな本大好きな三浦しをんの本に関するエッセイ集。


以前朝日新聞でティーン向け書評を書いていて、それで私は彼女の名を知ったのだが、最近その書評を読み返したいと思っていたのでまさにぴったりの本がでて嬉しい。


電車の中で人の読んでいる本を盗み読みしては、おもしろい作品に「おじさん、早くページをめくって!ほらほら、もう私の降りる駅に着いちゃうじゃないの」と心でせかしっぱなしだったが、願いむなしく下車となる。その後ネットでキーワードから捜索、一時間半後に書名を探って本を買いに行ったり(本の探偵)、自分の趣味でだけ本を選ぶと偏るから、電車で人の読んでいる本を買って読んでみたりと精力的だ。


どの話も面白いのだが、私がなんか笑っちゃったのは高村薫の「黄金を抱いて翔べ」での住田銀行の描写シーンに関するもの。大阪の土佐堀川沿いにある旧住友銀行が場所のモデルになっており、地名も書かれており、描写も細かく具体的なので知っている人はすぐに思い浮かぶ場所らしいのだが、大阪をしらない彼女はなぜか「神保町の高架沿いにあった古いアパートみたいな建物で、川の中州に建っている」ことに変換されてしまっていたので、後に大阪でモデルの地を見たときに大打撃を受けたというもの。


それにしても彼女のエッセイを読むと人柄がいい人なんだろうと感じられ、いい気分。