「犯罪小説集」 吉田修一

 

犯罪小説集

犯罪小説集

 

 この本は犯罪がモチーフになっているが、実際の事件をヒントにしているものが

多いようでどこかで聞いたことがある内容だったりする。

どの話も短編なのでうまくまとめられているのだが、犯罪を犯すものたちも

一方的な悪人ではなく切なくなる。

ギャンブルにおぼれる「百家楽餓鬼」はお金持ちもボンボンがギャンブルに

のめりこみ会社のお金に手を出していくのだが、主人公のボンボンは

凄く真っ当で混乱する。子供の時からいつ道を踏み外してもぐれても

おかしくない状況なのに冷静に物事を見極め、まともに成長し

大人になって結婚するときもトロフィーワイフ風よりも

ちゃんと尊敬できる女性を選び、自分も一緒にアフリカのキャンプに

ボランティアに行きやりがいを感じたりしている。

そんな彼が中毒のようにギャンブルにのめりこんでいくのに

些細なことがきっかけなのだろう。

 

小さな女の子が行方不明になる「青田Y字路」も終わり方に余韻があり

映画を見ているよう。

 

とても面白く読めた。

やはり吉田修一って好きかも。