「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ


チェスの天才リトル・アリョーヒンは
バスの中で暮らす心優しくお菓子が大好きの巨漢マスターに
チェスを始めて習う。彼とのチェスはいつも物語りがあり
美しい詩のようだ。

やがてマスターが亡くなり、リトル・アリョーヒンは
チェス人形と出会い、それを繰ってチェスをしていく。
小さく狭い場所でじっと縮こまり、耳を澄ませて
駒の動きを聞く。その傍らではいつしか棋譜をつける
色白で美しくはかないミイラが肩に鳩を乗せて佇む。

その2人にもやがて離れ離れになり・・


小川洋子のお話はいつも無国籍な感じで
そこが御伽噺のような不思議さと普遍性を感じる。
そういえば、フランス映画になった彼女の話もあったな。
この話もヨーロッパの話のようで、でも
子供達がお子様ランチを食べたがるのは日本的なような。
リトル・アリョーヒンは赤ちゃんのときに
口が開いてなく、手術であけて、すねの皮膚を口に
移植しているので、産毛がはえていたり、
体が多くなりすぎて死んでしまったマスターを悲しみ
大きくなることに恐怖を感じ自ら成長をやめる。


最後は哀しい終わり方ではあるのだが
とても納得できるような、彼にとっては必然のような
こうなるしかないようなエンディングだった。
それがまた物語に美しい余韻を残して心に残る。


外国でも出版されたら、たくさんの人が読んでくれると思うのだが。