「風の男 白洲次郎」 青柳恵介

風の男 白洲次郎 (新潮文庫)
白洲次郎に関しては正子の夫としての知識しかなかったが、先日のテレビの特集を見てから俄然興味を持ち図書館でこの伝記を借りる。


そして彼がまったくもって現代のマンガや小説のかっこいい主人公そのままのキャラクターで驚く。昔の人なのに欧米人にも見劣りしないくらい長身でハンサム、そしてお金持ちの坊ちゃんで自由奔放、イギリスで教育を受け、そこでもやんちゃ振りを発揮しスポーツカーをぶっ飛ばす。社会人になってからも錚錚たる人々(小林秀雄近衛文麿、犬丸一郎、正力松太郎佐藤栄作などなど)との付き合いがあり、イギリスでは大使館を定宿にしたりしている。晩年もポルシェを乗り回していた。


特に吉田茂とは仲も良かったらしくエピソードにも事欠かない。ずいぶんと吉田の方が年上だったが、ずばずばとモノを言い、その言い方も愛情が感じられてしかもかっこいい。「おじさま、放って置きなさい。胃に触りますよ。」とたしなめるセリフもしびれる〜。ミーハーな女の子達が大好物のキャラクターだ。


英語も達者で怒ると英語になるらしいのだが、戦後処理をしている頃、「巧みな英語で司令部の人々と電話で話しているかと思うと、下手な日本語でつっかえながら、日本官吏を怒鳴り知らしている」と友人の今日出海に証言されたりしているのも微笑ましい。


まっすぐで怒りっぽく、優雅で野蛮、大物ぶりを発揮する数々のエピソードが載っているが、彼がフェアであろうとすることから起こることが多いのは英国で鍛えられたか、もともと性格なのか・・・たぶん両方なのだろうが。


大蔵省秘書官だった宮沢喜一が吉田首相の特使となった白洲や池田勇人らとアメリカに行ったりした話も載っていたが、白洲と意外に交流があった宮沢はそれだけで私の中で彼の評価があがってしまった。