「坂東玉三郎 歌舞伎立女形への道」 中川右介

 

玉三郎の話だが、かなりの部分を歌右衛門が占めている。

昔の話は知らなかったが、歌右衛門が女帝として君臨して

権力を彼が求め、どんなふうに歌舞伎界を牛耳っていたのか

なんとなくわかってきた。歌右衛門の話を読んでいるとなんだか

中国の宦官を思い出す。もとはと言えば力のない彼らが権力を

握って思うままに朝廷を操っていたのと、歌舞伎界では中心でない

女形という存在だからかえって権力を握ることに執心したのかと

思ったりして。

 

ところで玉三郎が忙しくてある人のお葬式に出られなかったという

話が入っている。その際、田中角栄が必ずお葬式に出席していたという

逸話が入っており、疎遠に思っている人がお葬式に出席すると

遺族はとても感激するという。なるほどな~。

 

玉三郎との確執なども描かれていたが、やはり玉三郎というのは

伝説になる人物なんだと思った。三島由紀夫にも見出されたり、

苦労をしながらも実力でここまでのし上がってきたというのも

すごい存在と思いながら読む。

まだまだ彼の舞台を見たい。やはり歌舞伎の舞台で。