「批評という鏡」 渡辺保

批評という鏡

批評という鏡

2000-2004年の間の歌舞伎批評。

このあたりは歌舞伎をぜんぜん見ていない時期なので、読んでいると

惜しくなってくる。かなりたっぷりとした本なので、全部読み込むというようより

流し読んだり、じっくり読んだりしたが、今後も歌舞伎を見たら

その演目の記事を拾い読み返したくなる。

 

誰かの本に仁左衛門さんは「顔よし、声よし、姿よし」だが、男前すぎるせいか

評論家の受けがいまいちよくないと書いてあり、そうなんだと驚いたが

保っちゃんは特にそんなこともなく、むしろ好評なものが多い。

玉三郎ファンにも保っちゃんは厳しいと思われているようだがそんなこともない

と感じた。二人が夫婦や恋人同士だと情愛たっぷりの色気のある大人のふたりだし

「極彩色の錦絵のよう」と言われるような美しさと書かれてもいた。

玉三郎仁左衛門團十郎の「三人吉三」が見てみたかった。

 

そして保っちゃんは海老蔵が贔屓で期待しているのがよくわかる。

いろいろと難はあるものの、スター性や見た目など次の歌舞伎を

担う人物であるのは確かだろう。

 

保っちゃんの批評があまりに率直で悪いことにも正直に書くため、

役者の中では反発して、彼を排斥しようとした人がいるなどあとがきに

あったが、それも驚く。

彼の知識と見識を持って今後も批評を続けていってほしい。

 

ついでに演劇界1月号(2013)の「一三代目片岡仁左衛門」特集を見る。

13代目はやはり偉大な人だと感動。

好々爺然としてはんなりしたおじいちゃんのイメージがあるが、芯が強く

信念の人でかっこいい。「怪談話が好きで、一緒に旅行に行った芸妓さんや

舞妓さんを怖がらせた」と秀太郎が言っていたが、舞妓さんたちを旅行に

連れて行くなんて時代を感じる。

若い時の孝夫さんと仁左衛門さんの写真もあり、萌える。