「iSAMU」 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語  パルコ劇場

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宮本亜門の演出によるノグチイサムの物語。

窪塚洋介がイサム、美波が山口淑子、ジュリー・ドレフェスがイサムの母、

大森博史は魯山人、イサムの父、被爆者を演じる。

 

イサムのことは有名な芸術家ということしか知らずにいたが、彼がハーフだったと

今回初めて知り、山口淑子と結婚していたり、魯山人と交流があったり、

丹下健三とも交流があったなど興味深かった。

 

戦争により、自分を日本人と自覚し、強制収容所に志願して行ったり、そこではアメリカ人扱いをされ日本人から疎外されたり、幼いころも

ハーフであることで自分の居場所を探せずにいる。大人になっても

原爆慰霊碑の話に情熱をもって仕事に取り組むものの、土壇場でアメリカ人という

理由で断られたり・・・

 

子ども時代に母親と二人っきりでの生活、一角の芸術家になって日本に住むようになったイサム、現代のアメリカで証券会社で働く日本女性の物語が同時進行で進む。

 

舞台セットが素晴らしく、セットを動かさずに、照明や映像で、場所を飛行機の中、

被爆地、北鎌倉の古民家、ニューヨークのフラット、喫茶室、少年時代を過ごした

海辺の町など、次々と切り替わりまるで違和感なく入っていける。

星がきらめいたり、荒れ狂う海だったり、飛行機が通過したりとても臨場感ある

いい舞台効果、映像で感嘆した。

 

イサムを演じる窪塚君は淡々と現実を受け入れながら、もがきながら、苦しみながら

生きているさまを描いている。時に頑固に感じるのは妥協を安易にする人は

そもそも芸術家としてやっていけないのだろう。

窪塚君は綺麗目の恰好が似合うので今回のようなずっとスーツの役を今後もやって

ほしいな。

ジュリー・ドレフェスってフランス人じゃなかったっけ?と思いだしながら

見ていたのだが、とても英語が上手で時々発音がbritishになっていたのが

ヨーロッパ人を感じる。孤独の中、強くあろうと努力している母を好演

している。

 

図らずも千穐楽だった。よくまとまっており、イサム自身にも興味を

持てた。宮本作品はたぶん初めて見たのだが、わかりやすい舞台でとがり過ぎない

程度におしゃれで面白かった。

 

カーテンコールで照明が戻り、舞台セットが実はただの白いセットだったと

知ってとても驚く。美術チーム本当にすごいわ。