「鳥類学者のファンタジア」 奥泉光

鳥類学者のファンタジア
ジャズピアニストの池永希梨子(通称フォギー)は、
リサイタルの途中に出会った黒い衣装の女性が
昔ドイツで失踪したピアニストの祖母・曾根崎霧子では
ないかと思い当たる。まだ若いその女性は
「あなたがオルフェイスの音階を知っているなんて」と
意味深な言葉を残し、気づくと霧の夜に残されたフォギー。
それをきっかけにフォギーは祖母の歴史を
愛弟子佐和子と加藤さんと共にたどっていくうちに
いつしか第二次大戦中のドイツに飛んでいた。


光る猫パパゲーノ、ドイツ音楽神霊教会、ロンギヌスストーン、
ピタゴラスの天体、オルフェイス音階、宇宙オルガン、フィボナッチ数列
出てくるキーワードはなんだか古代ギリシャの香りがする。


途中の用語解説のようなところはさっと読み流してしまったが、
ハードカバーで2段のこの本は恐れをなした私が心配することなく
読むことが出来るくらいさくさく進んだ。


著者は疑いもなく女性だと思ってしまったが男性と知りびっくり。
女性の心理描写もさりげなくうまい。
フォギーも愛すべきユーモアのあるキャラクターなのだが
途中セルフ突っ込みがあまりに多くてせわしない感じがして
読んでいて疲れたが。


ピアノ関係のちょっとした話が面白かった。
ピアニストは練習好きが多いとか、ベートベンのソナタは
旧約聖書だとかパガニーニは悪魔に魂を売ったとか。
一番は「ホロヴィッツ曰く、ピアニストには三種類しかいない。
ユダヤ人かホモか下手糞だ」