「6ステイン」 福井晴敏

6ステイン
治安情報局(通称市ヶ谷)で働く人々の話を描く短編集。
今は堅気の会社員になって働いている元治安情報局の工作員が、昔の復讐のために命を狙われ、成り行きで一緒の電車に乗り合わせた生意気な小学生と逃げる「いまできる最善のこと」、元ソ連のスパイだった日本人の男と結婚した売れっ子芸者だった女性、彼女を守るために姿を消した夫をずっと待ち続けた彼女、姿を消した夫が残した大変な秘密を探る「畳算」、まるっきり見た目がコギャル、でも実は凄腕の防衛庁情報局員の女の子が自分の幸せをつかもうとひたむきに生きる「サクラ」、情報局のママさん局員と海賊シンジゲートの密輸を仕切る中国人の青年の交流を描く「媽媽」、その後日談的「断ち切る」、汚職に手を染める上司の摘発に以前失敗をして同僚の親友をなくした男がふたたび行動を起こす「920を待ちながら」が入っている。

どの話もちょっとホロッとするところがあり、なかなかいい話が集まっている。特に如月行の好きな私は彼の出てくる「920を待ちながら」は特に楽しめる。行が他人との間に壁を作り寄せ付けない様子なのに「不意に懐に飛び込まれたよう」な感じを突然与えたりするのは、急に幼く見えて可愛いね〜。