「オーデュポンの祈り」伊坂幸太郎

警察から逃れる途中、気がつくと見知らぬ島にいた伊藤。江戸以来鎖国を続けているその孤島では、しゃべる案山子が島の預言者として崇められていた。翌日死体で発見された案山子の謎を追っていく伊藤と案内人の日比野。伊藤が住んでいた仙台では、元恋人が警官で元同級生の城山に狙われ、危険が迫っている。

なかなか面白い物語だ。その島の住人は一風変わっている。すべて逆のことを言う画家や、太りすぎて動けないウサギさん、うちの中で足の踏み場もないほど鳥を飼っている田中。その中でも、その美しさと対照的に残酷無比で簡単に人を殺していく桜(その女性的で愛らしい名前だが実は男性)。この桜はみんなと交わらず「詩を食べて生きて」いる。彼が殺すのは罪を犯した人々で、島のみんなはそれを当たり前に受け取っている。雰囲気がなんとなくスナフキンのようだと思いながら読んだ。

伊坂幸太郎の本はなかなか面白くて好きだが、必ず誰かあくどい人間が出てくる気がする。今回の城山は吐きたくなるほど怖くて嫌なやつだった。