須賀敦子の文字を久しぶりに新聞広告で見つけて以来読みたくなって仕方が
なかった。実家に「ミラノ霧の風景」はあった気がしたが、図書館で
すぐにあったこの本をまず借りて読むことにする。
この本もおそらく以前読んだことがある気がするのだが、内容は
すっかり頭から抜けている。
そして今回読んで新たな感動だった。
とりあえず彼女がすごいお嬢さんだったと知って驚き、古き良き時代の香りを
彼女のエッセイを通してとても楽しめる。彼女の父親もお坊ちゃんで当時
ヨーロッパをしばらく旅行して遊び暮らしていた。
彼女の視線はいつも慈しみに満ち、出てくる人たちはいちいち愛らしい。
まるで夢の世界に迷い混んだようだった。
疲れきって熱がちな体を持て余し、窓をつい開けたところ、
劇場から大きな音でアリアが流れ込む。
その日は何かの記念の日だったらしく、上演中のオペラを外のスピーカーから
流して周りの人も聞ける状態だったそうで、近くに座って思い思いに
聞き入る様子も描かれていた。
車の通らないヴェネツィアでは夜は聞こえるのは
水音ばかりでとても静かな中、流れるアリアはかなり幻想的で
あまりにもヴェネツィアに似合いすぎる風景だ。
人間関係が濃いイタリアをいとしく思いながらも、イギリスに行った時に
「他人を他人としてほうっておいてくれ気が休まる」とか
エジンバラの街が「イタリアと違って静かすぎて違和感」を感じたり
と書いてあるのが新鮮だった。
また他の彼女の本を読みたくなった。