「チーム・バチスタの栄光」 海堂 尊

チーム・バチスタの栄光
アメリカから呼び戻された優秀な医師桐生を中心に精鋭が集められたバチスタチーム。脅威の成功率で次々と手術をこなす彼らだったが、3件立て続けに患者がなくなる事態が起き、不審に思った桐生は病院長の高階に監査の相談をする。病院の命運をかけるような大事な調査を命じられたのは、窓際街道驀進中の不定期愁訴外来(別名愚痴外来)医師田口だった。


ミステリーの結末はあっけないほどだが、その過程や出てくるキャラクターが大変面白く読める。ストーリーテラーの田口もいい味だし、病院中に果てしない影響力を持ち、あらゆる人脈があるような看護士の藤原(彼女のものごとを適切に把握する能力にはびっくり。特に新しくチームに加わった大友看護士を「女性しか愛せない」とか言ったりしたところなど)。 高階病院長も余裕のある大人でしかもなかなかの食わせ物ぶりが素敵だし、途中で調査に参加した厚生省の白鳥(彼はこの前読んだ「砂漠」を思い出す)も漫画のように派手に立ち回り、そして強烈奇天烈なキャラが強引に物語に読者を引き込んでいく。


そして完璧優等生な桐生と彼の義弟鳴海の関係が私のつぼだ。鳴海は「冷たく整いすぎ」ていて、「しなやかなムチのような細身、気まぐれなシャム猫。うかつに手を出すと、気高く無視されてしまい」そうになるという見た目が私にストライク!見かけの優男ぶりと対照的に毒舌で気が強かったりするのに、白鳥に追い詰められて桐生にすがるような目を向けたりするのも可愛い。


彼らの関係も過去に悲しい事故があることが物語りの最後の方に明かされるのだが、その後ふたりが別々の道を進むのは個人的にはさびしい限りだ。
最後は順当な終わり方ではあるのだが。


田口はチームのみんなを面接する際に、それぞれ何を研究しているのか聞いていたが、医師だけではなく、麻酔士も看護士みんななにかをやっていたのだが、働きながら研究するのは普通なのだろうか?すごいわ。