「雪が降る」 藤原伊織

雪が降る (講談社文庫)
ネットと紹介されて面白そうと読んでみた短編集。
かつての部下が社内で仕事に行き詰まり今の上司を殺してしまう。それをきっかけに吉井は子供の頃に出会った悲しい殺人事件の思い出す。実家の玉突き屋にある日若い青年が訪ねてくる。彼はぼうっとしているようで、いかにも素人くさかったが、実は打ってみるとビリヤードが驚くほど上手い。吉井は興味を示して彼の相手を務めだんだんと仲良くなっていく。その青年は色が白く物腰も優雅で話す言葉も場末の玉突き屋にふさわくないと思われるものだった。ところがある日ヤクザ崩れの成金とけんかをすることになり・・・

この「台風」という短編でその青年の描写は「はきだめに鶴」といった感じで、いつも静かに穏やかで育ちのよさをあちこちで感じさせる。その彼に悲しすぎる結末が待っている。近所の女の子がお店の手伝いをしてくれていて彼女も重要な登場人物なのだが、彼女から最後その青年の秘密が語られる。会社での殺人事件を起こした部下の話もつらいもので、全体的に悲しい話だが、最後の結末のおちはちょっといい。