「煙突掃除の少年」 バーバラ・ヴァイン

煙突掃除の少年 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

煙突掃除の少年 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


最近亡くなった小説家のジェラルド・キャンドレスの回想録の執筆を
持ちかけられた娘のサラは父の過去をほとんど知らないことに気付き
父の過去について調べ始める。
父の出生証明書をもとに親類らしき老女を尋ねると
「ジェラルドは5歳のときに髄膜炎で死んだ」という。
父は本当は誰なのか?秘められた過去の先に衝撃の真実があった。


ものすごく文体が古く感じるので昔の話かと思うと
「オアシス」や「ティラミス」なんかも出てきて最近でもあるようで
読んでいて混乱する。そしてさして必要との思えないような
些細なdetailが延々と書き込まれているのは外国の翻訳物と感じた。
細部がだんだんと鬱陶しく感じられて、もしかしたら最後まで完読できないかもと
思ったが、最後の方の展開はあれよあれよと進み、
「あれ?これで終わり??」と思う終わり方だった。


ジェラルドはゲイでそれは心に秘めたまま偽りの結婚生活を送り、
2人の娘に関しては溺愛して大切に育てていた。
そんな結婚生活で妻は孤立し、心がすさんでいったが、
夫の方は「禁欲的な生活を送っていても、老年になっても、
あいかわらずうんざりするほど官能的」な雰囲気で
この一行でどんな人なのかすごくよく表されて感心した。


彼は過去の深い心の傷を負っており、なおかつ彼の弟は事件で殺されている。
彼の小説は基本的に現実の話をベースに書いているのだが、最後の遺作となったものには
本名のままに事実を描き、それを知人の小説化に託す。
その本は知人名義で出版され、読者は最後にすべての内容を理解するという展開なのだが
趣向は面白いと思った。

それにしてもどうして外国の読み物って登場人物が多いのかしら?
扉の紹介だけでは足りないわ〜。
すぐに誰だか忘れるし。