「スイートリトルライズ」 江國香織

スイートリトルライズ (幻冬舎文庫)

スイートリトルライズ (幻冬舎文庫)


江國作品が好きで一時は新作出る都度読んでいたのに
なんとなく最近は読めずにいたのだが、今回手をとったのは
ひとえに私の好きな大森南朋が出演で映画化となったからだ。
そしてあるブログで原作のこの夫はすごく彼っぽいとあって
俄然興味をもって読んでしまった。


人気ベア作家の瑠璃子は夫聡と仲がよく表面上はなんの不満もない生活を
送っている。定時で帰宅し、かならず家で食事をするし優しい夫は
夜になると部屋に鍵を掛け、自室でゲームをしている。
お茶を用意すれば一緒に飲んだりするが、言いようのない寂しさを
いつも瑠璃子は抱えていた。
ある日瑠璃子はふとしたきっかけで不倫をする。
そして夫の方も・・
一緒に帰る家には甘く小さな嘘がある。


この本を読んでいて、そういえば、彼女の作品に出てくる女性は
小さな狂気のようなものを秘めている人がおおいのだったなと思い出す。
自分にとても正直でそれで傷付いたり、傷つけたり、悩んだりしている。
出てくる男性達はみんな優しく穏やかだ。
今回の聡もおっとりとした素直な性格でちょっとうかつな男性だ。
妻を守りたいと思いながら、一方で無条件で信頼を寄せて母のように頼っていたり。


最後がすっきりとわかりやすいわけではないので、ちょっとフランス映画のような
あいまいさがある。それを不満に思うとしたら、アメリカ的な分かりやすさに
毒されているのかも、私と思った。


妻は以前イギリスにいたことがあり、寝室も自分の好きなインテリアで飾り
夫の聡にズボンのない裾の長いディケンズ時代のようなパジャマを着せている。
なんだか南朋ちゃんがそれを着ていることを想像したら、ちょっと可愛くて笑える。