「夜にそびえる不安の塔」 井形慶子

夜にそびえる不安の塔

夜にそびえる不安の塔


著者は編集者のサワダから霊能者についての潜伏取材を依頼される。
彼は3人の霊能者を紹介し、ほどなく彼自身はフランスに失踪してしまう。
彼女の取材費を自分のポケットマネーから出してまで200万を用意して。


3人の霊能者には本名を隠して、仕事や人間関係の相談を続けるが
彼らはすべてを見通しているかのような返答を繰り返し
そしてそれは現実となっていく。
相手の心の中を知り、未来を予測していく日々に彼女はのめりこんで行った。


この本を読んでいて、これは本当の話なのかと混乱をした。
それくらいこの霊能者達はなんでもお見通しだし、不思議なことが
たくさん起こった。
著者自身も霊感の強いほうらしいのだが、普段はとても成熟した
常識人然としている印象だ。
こんなになんでもわかってしまうのなら、のめりこむのはよく分かる。
彼らのお客さんの中には、相談料を払うために風俗で
働くようになる人までいるという。


人間は元来、霊的な生き物で、太古の昔には潜在意識が発するメッセージを
キャッチすることは普通にできたが、もはやさまざまなことを
予知することはできなくなり、その能力を引き継いでいるのは
霊能師たちくらいになったしまったという。
直感の強い人は他人の潜在意識とつながれる回路を持っており
これは訓練で手に入るものではない。
毎日便利だからと階段近くの3両目の電車に乗り続けるのではなく
今日は1両目に変えてみたりして、直感の鋭い人は人生に変化をもたらし
運命を変えていくという話や、いろいろと計算しつくしてことにあたるより
無心でしたことのほうがうまくいくことが多い話を聞くと
直感というものをもっと大切にしていくべきだなと思った。


世の中にはうさんくさい占い師や本当の霊能師やら混じっているが
もしも私が話すチャンスがあったらどうするだろう?
いろいろなことが前もって分かるということは
果たしていいことなのだろうか?