「レクサスとオリーブの木 下」トーマス・フリードマン


どんな分野でも勝者は大規模なグローバル市場に売り込める
おかげでがっぽり儲けられるが、一方ほんの少しばかり能力の
劣る者やまったく技能のない者は地域市場での販売だけに
限られてしまい結果として儲けが少なくなる。

著者はマイケル・ジョーダンについて言及している。
マイケルが一人勝ちしている状況で、同じチームで
試合に出ていても、ほんの少し彼よりもシュートの
腕が劣っていて、少しだけジャンプショットが不正確で
ほんの少しフリースローにむらがあり、ディフェンスの
腕が劣っているだけで7900万ドルも違う。
1998年には25パーセントの選手の俸給が
NBAの最低額だったという。NBAはアメリカ社会の縮図となり
はじめている。金持ちはより金持ちになり、貧しい人々が
大勢いて。中間層は消滅の危機。

これを読んで「ジップの法則」だと思い
今度はこちらを読んでみたくなった。


ただグローバル社会は人類かつてないほどの
多くの人々の生活水準を、かつてない速さで
かつてない高さに押し上げているという。
そしてグローバル化は文化を均質化していく一方で
人がそれぞれ独自の個性をより幅広く発揮することができる。
これは端的にグローバル化を説明していてわかりやすいと思った。


この均質化ということで思い出したことがある。
以前ロサンゼルスに行っても、香港に行っても、ローマでも
リオでもカサブランカでもどこに旅行に行っても
テレビをつけると友人はCNNをつけていたことを思い出す。
泊まるホテルがアメリカ系のシェラトンとかが多かったせいもあるが
ケーブルがほとんど入っていて、私はせっかくだから
言葉がわからなくてもその土地のローカル番組が
見てみたいと思うのだが、友人達は言葉がわからないし
興味はなかったようで気付くとCNN、たま〜にMTVといった感じ。
慣れないところで慣れてる番組を見るとほっとするのか。
最近はアジアあたりではNHKがケーブルで見られるので
もっぱらNHKになりつつあるのだが・・(オリーブ化??)


著者は世界を5つのガソリンスタンドになぞらえているが
とても面白い。
まず日本のガソリンスタンド。1ガロン5ドルと高いが
制服を着用し、白い手袋をして終身雇用の男性が4人で
ガソリンを入れてくれ、窓をふき、笑顔で手を振る。
(賃金は低めだが終身雇用で、外国からの参入を制限して
職場と報酬を守る。)

次がアメリカのスタンド。1ガロンは1ドルと安いが
自分で入れて、窓は自分で拭き、タイヤに空気を入れる。
そしてあなたが来るまで角を曲がるときには
4人のホームレスが車のホイールキャップを盗もうとする。
(消費者は王様で、唯一の目的はもっとも安い価格で最高品質の
ガソリンを提供。労働市場に柔軟性があるから従業員は
他の仕事を見つけられる。)


次が西ヨーロッパのスタンドで1ガロン5ドル。
店員はたったひとりで、しぶしぶガソリンをいれ
ニコリともせずにオイル交換をする。(組合の協約はこの二つ)
窓は拭いてもらえない。店員は一週間に32時間しか働かず
しかも一日あたり90分の昼食休憩をもらい、その間は
スタンドは閉まっている。夏には6週間のバカンスあり。
通りの向こうでは彼の弟二人と叔父がゲームに興じている。
彼らは失業保険の額が働いていたときよりも高い。


4番目は発展途上国。1ガロン35セント。
15人がそこで働いている、全員が親類だ。
お客が来ても全員がおしゃべりに熱中している。
政府から補助金が出ているので、ガソリンは安いが
6つある給油機のうち、動くのはひとつだけ。
あとの5つは故障しているが、ヨーロッパから部品待ち。
かなりガタが来ているがオーナーはチューリッヒに住んでいて
利益を全部国外に持ち出している。


最後は共産国。1ガロン50セント。
店にガソリンはない。4人の従業員が闇市場で
1ガロン5ドルで売り払ったせいだ。スタンドには4人のうち
ひとりだけ来ている。あとの3人は地下経済活動の副業で
忙しく、週に一度だけ給料支払い小切手を受け取りにやってくる。


このガソリンスタンドの話はすごく的確に世界を現していて
おもしろすぎる。でも日本型スタンドって日本以外にあるのだろうかと
ふと思った。