「I LOVE YOU」 石田衣良、伊坂幸太郎ほか

I love you
男性作家6人による恋愛小説の短編集。
動物園でデート中にばったりあった姉の元恋人と今は行方不明になっている姉の話をする「透明ポーラーベア」(伊坂幸太郎)、幼稚園の頃からの幼馴染で今でも女を感じさせず友達として飲み歩く日々の萌枝と隆介、そのふたりに微妙な雰囲気が流れ出す「魔法のボタン」(石田衣良)、カフェで声をかけられた昔の同級生を同姓の同級生と勘違いしたまましばらく話しを続ける「卒業写真」(市川拓司)、学校でもスターの幼馴染の年上の友達は誰もがあこがれる美少女と付き合っている、でもほかにも百瀬という女の子とつきあっていて・・「百瀬、こっちを向いて」(中田永一)、大学の友人坂本に誘われ木戸さんというちょっと変わった人の家に一緒に飲みに行くことになり、友情をいつしか育み青春の影も感じる「突き抜けろ」(中村航)、離婚を決意した二人が最後のディナーをとる「sidewaik talk」(本多孝好)。


どのお話もよくまとまっていてとても面白かった。「卒業写真」はどうしてこんなに女の子の気持ちがわかるのだろうとありきたりだけどびっくりした感想で、でもやはり伊坂幸太郎が私は好きだ。


彼の話は今の日常のリアルとファンタジーがいい具合にブレンドされていて心地いい。
主人公優樹は、代々の姉の恋人達とそれなりに仲良くしたりしていたのだが、その一人のミュージシャン志望の男は彼に「ビートルズを聴け!」といつも言っていた癖に、いざ優樹がアビーロードを聞こうとしたら「駄目だ、それは最後に聞かないといけないアルバムなんだ」とこだわり炸裂して、そんなところが本当らしくおもしろい。


「愛するとは、お互いに見つめ合うのではなくて、同じ方向を見つめることである」という言葉が紹介されていたが、真実だな〜と感心。