「卵の緒」瀬尾まいこ

卵の緒

ほんの少し気合を入れて、鳥肌立ちそうな言葉を吐くって大切なのよ。そういう言葉が人付き合いを円滑にしていくの

自分は捨て子だとの疑惑をぬぐい切れない育生。その質問をしたときの母や祖母の対応を観察して、ますます自分が捨て子に違いないと感じる描写が「ありえて」おかしい。たとえばまず「ぼく、捨て子なの?」と聞かれたら「そんなわけないじゃない」とぎょっとした表情をされたら、あぶない。捨て子じゃないなら、どーんと構えて「そうよ、あんたは大和川の橋の下で拾ってきたのよ」と切り返すのがいいのだという。母子家庭だったが、母が恋をして、会社の同僚の「朝ちゃん」と結婚をする。そして母の妊娠が分かった頃に育生に昔の恋の話をはじめだす「卵の緒」

離婚で母子家庭の高校生七子。父の愛人の子供「七生」を母が突然引き取るといい、一緒に暮らすようになる。彼の母親は傷害事件を起こして刑務所に入ったため、まだ11歳の七生を引き取ることにしたらしい。七生は素直で可愛くみんなに愛されるが、そつがなさすぎ子供っぽくないと感じる七子。ほどなく母が入院して、元気そうなのに長引くことに不信を感じ始める「7's blood」

瀬尾まいこの物語には出てくる人々がみんな優しくていい人で、癒される。
悲しい結末が待っていることも多いけれど、暗いままで終わらず、なんらかの希望を持ってつないでくれるのも嬉しい。