「腐りゆく天使」夢枕獏ISBN:416319620X:image:small

土に埋められている自分。死んでいるのか、生きているのか、夢なのかわからないまま、彷徨う。
病気療養中の人妻に恋をする朔太郎。
彼女の通う教会の美貌の神父もまた彼女に惹かれている。
その教会の香部屋には手を広げ微笑みながら腐りゆく天使がいる。
神父には少年のころ異国の神父に招かれ抱擁され口づけをされた過去がある。
今、教会に来た美少年を香部屋に招きいれ同じことをする。
二人は甘美な陶酔の世界へ罪悪感とともにはまる。
いつしか大人になった少年を遠ざけ始める神父に絶望して自殺する少年。
それが埋められた自分の正体と知る。
腐臭を放つ天使が骨だけになったころ神父もまた自殺をする。
遺書は人妻の家の近くに残し、人妻の死後朔太郎のもとにわたる。

すごく怖くて退廃的な雰囲気のお話だ。
実際の萩原朔太郎の詩や書簡を織り交ぜて話は進む。
朔太郎が出す手紙の相手は室生犀星と白秋だ。
実際の手紙もかなり情熱的な感じだった。