「リヴィエラを撃て」高村薫

リヴィエラを撃て (新潮ミステリー倶楽部)

リヴィエラを撃て (新潮ミステリー倶楽部)


東京で起きた国籍不明の男女の殺人事件を追う刑事の手島は、その後CIA,MI6を巻き込む壮大な物語に突き当たる。リヴィエラというコードネームを持つ謎の東洋人を捜し求めて行き着いたのは・・・

以前アイルランドに行った時、IRAのことが心配ではあったのだが、私の行ったダブリンやらアラン諸島やらはのんびりとした田舎でそんな気配もなかった。そういえばどんぱちやっているのは北のベルファーストの方だったことをその後思い出したが、この物語で主人公のひとりはIRAのテロリスト、ジャックだ。その活動の描写もあったが、各国のテロリスト網と繋がっているというのは恐ろしいことだ。闘うことが目的になり、だんだんと何をするためにテロをしているのかがわかりづらくなっていく、そして闘う日常をこなす。でもやはり宗教が違うというのは交じり合うのが難しいだろうから、北アイルランドはどうころんでも不幸はあるのかもしれない。
中国がらみで利益を得る裏取引に応じたMI6の大物ギリアム、その一連のスパイ行為を影であやつるリヴィエラ、ギリアムに使われ現場で動いた美貌のピアニスト、シンクレアとその友人でプロモーターのダーラム候、もと警官で今はMI5で働くキム・バーキン、その上司のMG,キムの警察時代の上司モナガン、CIAでジャックに近づく「伝書鳩」など多彩な人々が出てきて話を盛り上げるのだが、結局はこれらの人は最後はほとんど亡くなってしまう。
キム・バーキンもかなり中心的登場人物で、最後の方は手島と協力して捜査をするのだが、雰囲気がなんだが合田刑事を思い出す。そして出てくる人が美形が多すぎ。シンクレアはまあいいとして、ダーラム候も手島もジャックもみんなハンサム、そしてキムだって端整な顔をしているんだから。私は美形大好きだが少々大安売りな気もする。
昔何度か訪ねた英国の景色が思い出され懐かしい。なぜか鮮明に思い出すシーンはペチコートレインのマーケットでジャックの前をふわふわと歩いているシンクレアと、キムが銃で撃たれて手島の首に腕を回して抱きつこうとしたところだ。スローモーションのようになんだか頭に浮かんだ。
これを機にイギリス舞台ものが少し読みたくなった。