小川洋子のエッセイだが各話が短編小説のように優しく美しい。
そしてこのタイトルも内容に相応しく珠玉だ。
歩いている時に巨大なグレートデーンが吠えるのに驚いたお母さんが
悲鳴をあげると「でも女の子だよ」と一緒にいた小さな男の子がいう。
母親は「フェンスに手をかけて噛まれないで」「機嫌が悪い時もある」「気をつけて」と
息子に言うたびに「でも女の子だよ」と繰り返す息子を愛おしくみる話や
著者が子供の頃大好きな桃を夢中になって食べるその傍で祖母は桃の種をしゃぶる。
その時のことを思い出して「一切れあげるよ」とどうして言えなかったんだろうと後悔
する話など読んでいてジーンとする。
あと「きかんしゃ やえもん」を息子が小さかった時に何度も読み聞かせたと言う著者。
この話は知っているようで私は知らなかったのだが、老いぼれたやえもんが火事を起こしその結果屑鉄にされるという展開になるらしいのだがそこで必ず息子は泣いたという。
最後は博物館で新たなスタートを切ると知っていても悲しみ、安堵し喜ぶという
感情を毎夜味わうのが彼らの儀式だったという。
そしてやえもんの著者が阿川弘之と知って驚く私。