「つくられた格差」エマニュエル・サエズ ガブリエル・ズックマン

 

 朝日の書評で興味を持った本。

 

不平等税制が産んだ所得の不平等をアメリカの税制の歴史から読み解く。

 

各国は税金を下げるチキンレースに参加させられている状態なのは納得するが

意外にもグローバル企業の稼ぎを各国政府はかなり正確に把握できているらしい。

だからと言って課税できる分けではない。租税回避などがあるから。

 

アメリカの税金の考え方もちょっと驚く。

政府の主な役割は財産権の保護にあり成長は利益を最大化しようとする企業に

任せるべきでありそのためには支払う税金を最小化した方がいいという考えで

個人にとっては税は単なる損失であり合法的な窃盗と変わらないとか。

累進課税を緩めることにより雇用を創出できるとか。

 

しまいにはJ.P.Morganは税金逃れを指摘され堂々と

「脱税と租税回避は違う。税法の抜け穴を使ってより多くの所得を残そうとしている

だけ。抜け穴を塞ぐのは政府の責任。それをうまく利用する人間に非がある分けではない」

とか。

アメリカ人って本当にいろいろ考えるな。

流石にアメリカ政府もあまりに税金が少なくなるのは痛手だし、そうは言っても

税金は大切だから取りたいと思っているようだが何せ、納税を嫌がる人びとの

かける資金、マンパワー、戦略に対して政府のマンパワーと時間は

限られているからなかなか思うようにいかないのは納得。

 

各国で協力して税制を決めるとかが必要なのだがこの本では

難しいと言われていたが、とうとう最近のニュースでアメリカの高官が

各国に税率に関して協力しあおうと提案していたようでとうとう来たか。