「イミテーション・ゲーム」

ベネディクト・カンバーバッチエニグマの暗号を解いた天才数学者

アラン・チューリングに扮する。

とても面白い映画だった。

 

エニグマを解くまでのスリルとサスペンスの話かと思ったが、一番描かれているのが

アランの孤独だ。エニグマを解いたら「やった!」とすぐに戦争が終わり

めでたしめでたしかと思ったが現実はそう簡単には行かないし、アラン自身も

それで一躍ヒーローになりその後悠々自適でとはいかず、むしろより孤独になり

最後はいたたまれない終わり方になっている。

それでもとても興味深く面白い映画で満足度は非常に高かった。

 

字幕ではケンブリッジの教授とでていたが、せりふではKing'sと言っていて

「おお~」と思ったり。エニグマ解析チームに新人を雇う際に国家の仕事と

いうところをHer majesty's仕事と言っていたりしたが、現在でもそういう言い方を

するのだろうか?海図の上に記した船にHMの文字があって、それもイギリス船の

印だなと普通に見れた。

 

パブリックスクール時代の親友クリストファーは理想の優等生だ。

かっこよく、正義感があり、優しく、頭もいい。いつしか恋心を抱いていくアランが

休み明けに会うのを楽しみにし、次々と寮に戻る学生達の中からクリストファーを

探し続け、とうとういないことを知って落胆するのは胸が痛む。

その後学長に呼ばれクリストファーが病死したことを知らされるのだが、

その時にはクリフトファーから裏切られるような何かを言われるのではと

少なからず恐れて成り行きを見ていた私はせめて美しいままの思い出で終わったのは

救いだった。当時はゲイの迫害がすごかったみたいだったし。

 

キーラ・ナイトレイ扮するジョーンという女性は物語とアランに救いをもたらす。

彼女は聡明で明るく、アランを導き、彼を助ける。

一度は婚約までアランとかわすが、彼がゲイだと告白して破棄となるが、

告白した彼に「だから何?そんなことは知っていた。でも一緒にいられる。

お互い好きで大切にできるから」と言う彼女の肝の据わりぶりもすごい。

彼らは本当の友人になれていたのだろう。

 

「人が暴力をふるうのは気持ちがいいからだ」というせりふがあるが、

なぜ人は暴力を振るうのだろうと思っていた私に答えをくれた。

だからなくならないのだ。

 

エニグマ解読の件は50年秘密にされ、またアランの名誉回復も2013年に

エリザベス女王により恩赦されたと聞いてそんなに最近のことかと驚く。

そしてエニグマ暗号がどんなに優秀なものなのかと思い知らされる。

ブレヒトよりもドイツ語がうまい言語学者にエニグマ解析を任せてもできなかったと

いうせりふには笑った。

当時はとてもドイツに勝てる気がしなかっただろうな。

エニグマを作った人の話も読んでみたくなった。

 

クレジットでCharles Danceの名があって、懐かしく思ったが、

アランの上官デニストン中佐だった。昔の印象と変わったな。