「比類なきジーヴス」 P G ウッドハウス

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
ちょっと頼りない坊ちゃんバーディと完璧な執事ジーヴスが、身の回りに起きるさまざまの事件を解決していくシリーズ。


脇役には口うるさい親戚のおば様、アガサ伯母さん(イギリス物には必ず出てくる典型的なうるさ型おばさま)、いつも恋をしてはバーディを巻き込む親友のビンゴ、ビンゴのおじさんで経済を握っている老リトル氏、双子のいとこでやんちゃなクロードとユータスなど。大体の場合はビンゴが恋をして事件を起こすパターンのようだ。
イギリスではとても人気のあるシリーズらしい。


バーディが趣味の悪い服を買ってきては嬉々として着ようとすると、ジーヴスが手を尽くして処分しようとする。バーディはすごくがんばって抗おうとするが、ジーヴスは瞬殺といった感じなのはおかしい。
なにか事件が起こっても、ジーヴスが淡々と片付けていく。バーディ、ビンゴをはじめ男性陣には大人気のジーヴスだったが、アガサ伯母さんなど女性チームの人気が薄いようなのはなぜだろう。


日本語訳では執事になっているが、家を一切切り盛りするbutlerと違い、ジーヴスはgentleman's personal gentlemanと言われる「紳士の身の回りの世話をする紳士」といった感じで、またはvaletと言われたりも物語でしているらしい。執事にもいろいろいるのね〜。

やたらと有名な詩や物語のセリフの引用が、出てくるのがイギリスの文学といった感じだが、いろいろなことがすぐに賭け事の対象になるのもイギリス的。


訳者はもうすこし若かったらヒュー・グラントがバーディにぴったりと後書きに書いていたが、本当に若き日のヒューだったら、今の彼みたいな軽妙なおかしさは出せなかったのではないだろうか?「モーリス」のときは退廃的で他人を寄せ付けない雰囲気をもった尖った美しさだったしな・・・