「ほろびぬ姫」 井上荒野

 

ほろびぬ姫

ほろびぬ姫

 

 病気で死期の迫った夫が、すべてを夫に頼っている妻みさきの今後を思い

連絡の絶えていた双子の弟を探し突然連れてきた。穏やかで大人な夫と違って

粗野で粗暴な弟に戸惑うみさき。夫の思惑は・・

 

双子の兄である夫も弟も、妻のみさきからは「あなた」という2人称で

すべて進んでいくから読んでいてこんがらがるが、もちろんどちらのことを

言っているかはわかるし、そういう実験的な作法が面白くもある。

 

そんなに何冊も読んだことがあるわけではないが、井上荒野の小説に

出てくる男女はみんな恋愛体質で、もてそうな人が多い。

女性が好ましく感じる男性のしぐさとか話し方とかの描写もうまい。

読んでいると好感を持ってしまう気がする。