「死神の精度」は大好きだったので、そのシリーズのこの作品はうれしい。
前回は短編がいくつかだったが、今作はひとつの物語で進む。
幼い子供を近所の若者に殺されてしまった夫婦が復讐することだけを
生きる支えにしているところに死神が現れる。
初期の伊坂さんの作品を読んでいると面白いのだが、必ずひどく邪悪な人が
登場してきて戸惑ったりしたが今作でもひどい人が出てくる。
アメリカでは25人に一人は良心がないと言われるという話がこの物語に
頻繁に出てくるのだが、そうならごく普通に見える人々が実は・・となって
なんだかとても恐ろしい気がする。
最近の伊坂さんの作品は寓話的なものが多く難解に感じたが、今作は面白かった。
こんな風に物語が読みたいんだな、私は。
読者は読んでいて悪い最後を予感させられながらも一抹の期待を抱いて
読み進んでいくが、それは容赦なく終わる。でもだからといってただがっかり
する終わり方ではなく、希望を見いだせる終わり方なのでよしとしよう。