「64 ロクヨン」 横山秀夫

64(ロクヨン)

64(ロクヨン)

刑事として長く生きがいを持って働いてきた三上が広報官に移動となった。

理不尽な上司や思うようにいかないマスコミ対策、どこか仮の住まい的に

思っている広報官の仕事、愛娘の失踪。

そんな中、14年前に起きた未解決の誘拐殺人事件「64」の視察のために

今更長官がわざわざ視察にくるという。なぜ今なのか?意図はなんなのか?

そして14年前の事件にそっくりの誘拐事件が起こる。

 

主人公の三上は仕事もでき、人望も信念もある男だが、とにかく見た目がよくないらしい。中年のおっさんになれば、味として風格も身に着けいいだろうが、

そっくりの容姿を受け継いだ娘は深く悩み続けとうとう失踪してしてしまう。

身元不明の遺体が見つかっては娘ではないかと見に行く日々の心労に加え

警察内でのパワーゲームにも巻き込まれ、本当に大変だわと

他人事ながら読んでいてつらかった。

 

高校の同級生で昔は剣道部で補欠だった二渡が、今は三上よりもずっと出世街道を

行っている。レギュラーだった三上が高校時代、試合後の控室で彼に

下級生にさせるように自分にタオルを出させてその時の二渡の暗い目を

思い出すというシーンは小さなエピソードだがずっと頭に残る。

二渡とは現在は交流はなく、自分の敵なのか味方なのかわからない行動を

取っている。最後はすべてを解決するのではなく、想像の余地を残して終わる。

二渡の存在もとても気になり、彼の話としてもまだ続きが書けそうと

思うので続編を希望する。

読み応えのある面白い本だった。