杮葺落六月大歌舞伎 第一部

f:id:dji:20130628143709j:plain
鞘当 橋之助勘九郎
喜撰 三津五郎時蔵
 
貢いでいる、私は仁左衛門さんに貢いでいる!
歌舞伎座新開場のため、一等2万、2等でも15000円だが、
このところ大枚をはたいて来てしまっている。今日も一等席を
買ってしまい一番前の席というところに初めて座ってしまった。
当然のことながら舞台が近く、鬘の境界線までよく見える。
 
隣のおしゃれな奥様風の人はおもむろに靴下を履きだし、隣のおばさまは
物語の進行に関係なく一直線に仁左衛門さんをガン見、
後ろではアイスを食べていたり、なかなかフリーダムだった。
そういえば劇場内は飲食禁止が多い昨今、
ここは中でも食べられるんだったなと思う。
 
「鞘当」は吉原ですれ違った侍同士がさやが当たったと斬り合いになりそうなのを
茶屋女房が止めに入るというもの。踊りのように滑らかに進むのだが、誰かが書いていたがこの作品がここに入る意味がよくわからなかった。
 
「喜撰」は三津五郎の踊りが素晴らしいと前評判が高かったので、楽しみにしていたが
確かに彼は常に滑らかに体を動かし続ける。内容は春の東山にやってきた喜撰法師
茶汲女の祇園のお梶を口説くもののあっさり振られ、迎えに来た弟子たちと帰ると
いうもの。常に明るくポップでふわふわとおかしみがあり楽しい感じだ。
お弟子の坊主たちには若い役者が多かったのだが、最近人気の子もいたのかしら?
最近の歌舞伎事情には詳しくなかったのでわからなかったが。
 
「俊寛」が今回の目的だった。ずっと前、歌舞伎をもっと見ていた時に会社で
歌舞伎エキスパートの先輩がおり、その先輩が俊寛はつまらない、退屈と
言い切っていたので、よほど退屈なんだろうと心に刻まれていた。
それ以来興味を惹かれなかったのだが、今回は仁左衛門さんがお出になっており、
歌舞伎写真売り場のも素敵だったし、評判もよさそうなので矢も楯もたまらなくなり
行ってみることにした。
平清盛への謀反のため流罪となった俊寛、康頼、成経の3人は流人の生活に
疲れ果てているが、成経が島の娘と結ばれることになり喜ぶ。
そこへ都からの使者が赦免を告げるが、島の娘は連れて行けないという。
悲嘆にくれる娘を見て俊寛は・・
 
俊寛は吉右衛門の当たり役らしく、奥深い演技を見せる。
俊寛は僧都だが、都にいる妻が恋しくて、都に帰りたくて仕方がなく、
決して悟りを開いている風ではなく人間らしい。都への未練たっぷりで、
悲しみや苦しみにくれて孤独な様をひしひしと感じさせる。
くら~い気分になるお話なのだが、そこに一抹の希望の光が仁左衛門さん
演じる都からの使者丹左衛門尉基康。左団次演じる瀬尾が杓子定規で
高圧的お役人体質なのに対し、丹左衛門は分別もあり、道理もわかり
情もあるという素敵お役人。なんとか俊寛に助け舟をだそうとするが
俊寛がかたくなで救うことができなかったまま船がでる。
その後の俊寛の悲観や絶望もとても共感できた。
 
船の渡しの橋が急で危なっかしく、そこを渡っている時に
仁左衛門さんがすっころんだらどうすると思ったが、無事だったものの
毎日あんな足場を行き来すると思うと心配です。
 
それにしても大河の清盛を見たおかげで、前回の源氏の宝刀「友切」や
今回の鹿ケ谷の戦など拝啓が昔よりわかるようになったな。
 
お昼をまたぐのだが、食事は観劇後でいいと思っていたが、思いのほか
おなかが空いたので、めで鯛焼きを並んで買って食べた。
意外にひとつつまむように買っている人も多かった。
中に紅白のおもちが入っていておいしかったな。