「漂砂のうたう」 木内昇

漂砂のうたう

漂砂のうたう


御一新後の根津遊郭で客引きの立番をやっている定九郎は元武士だが、自分の居場所がないと感じながら根無し草のように無気力に漂って生きている。ナンバーワンの花魁小野菊を引き抜こうと昔の知り合いが悪巧みを仕掛けてきて、その話に乗っていく定九郎だが・・

小野菊という花魁は頭もよく、人格もしっかりとしており、優等生的女性で大物感が漂い、ハンサムウーマンで、何かとかっこいい。定九郎になにかとまとわりつくポン太といいう噺家の弟子がキーパーソンになっており、噺と現実が交差して進んでいく。
兄貴格で妓夫の龍造も、仕事はすべて仕切って頼りになるのだが、それ以上に細かなことにも気が付き、定九郎のことも見ていないようでいろいろなことに気付いていて驚かされる。

作者が女性と知ってちょっと驚いたが、宮部みゆきがでてくる男性に色気があるから女性が書いたに違いないと思ったとどこかで言っていたらしい。すごいな。

新しい時代でもがいたり、苦しんだり、一生懸命生きたり、惰性で生きたり。でも最後は希望のある終わり方だったので読後感は悪くない。