「サクリファイス」近藤史恵

サクリファイス

サクリファイス


陸上でインターハイで一位になるほどだった白石誓は、現在は自転車ロードレースの
チームに所属している。まだ新人だったが、チームのエースになるよりは
アシスト側に回るタイプだ。ところがツール・ド・ジャパンで思いがけず
好成績をあげ総合優勝さえも夢ではなくなったところで、
チームのエース石尾のタイヤがパンクをして、自分はそのアシストに回ることに。
優勝はできなかったがそれでも無名の新人としてはかなりの好成績をあげ
その献身的な様子は話題になる。チームで頭角を現す白石に「石尾にエースは
つぶされるから気をつけたほうがいい」と警告する先輩がいた。
以前にエース候補は事故に見せかけて怪我をさせられ今は半身不随になったという。


自転車ロードレースの世界は、エースとそれ以外の大勢のアシストで成り立つ
チーム競技なのだと初めて知った。知らない世界を垣間見れ興味深い。
そしてツール・ド・フランスで有名なようにこの競技は欧州が本場で
サッカーと同じでみんな憧れている。
スペインやイタリア、フランスのチームは一流で、ユニフォームを見ただけで
「かっこいい」という存在なようだ。スペインのチームの選手と仲良くなって
部屋に呼ばれた白石が、そのチームでは禁止されているヌテラをおいしそうに
まわし舐めするメンバーに驚くシーンがある。日本ではとにかく高カロリーを取るため
甘いものもどんどん取るように言われているが、スペインではヌテラが高カロリーだから
チームでは禁止されているというのだ。5000カロリーくらい彼らは毎日取ると聞いていたし
ヌテラ禁止にはちょっと驚き、でも欧州人はやはりヌテラが好きなのねと再確認。


主人公の男の子は穏やかで健やか、謙虚でいい男の子だ。
最後に大きなアクシデントがあり、それはとても恐ろしいことだったが
裏に隠された事情を知り、さらに恐ろしくなった。
石尾のロードレースにかける強すぎる気持ちが怖く、ちょっと現実離れしていると
感じるほどだった。


読みやすい本だったが、一気に読んでしまった。