- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/03
- メディア: 単行本
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由紀夫には父親が4人もいる。母が4股をかけていて
彼らが別れたがらなかったので、4人と結婚しているのだ。(戸籍上は違うが)
ギャンブル好きの鷹、美形で女好き、そしてすべての女性に優しい葵、
大学教授で博学の悟、中学教師で体力自慢の勲。
それぞれがまるで違うタイプで個性的だが、みんな母を中心に
仲良く暮らしている。由紀夫はその息子だが、どの父親が本当の父親かを
DNA鑑定で調べようとはしない。父親達が「もし自分の子じゃなかったと
わかったら怖い」からだ。
由紀夫自身は勉強も運動もでき、女の子にも人気がある。
多恵子は彼の私生活にずかずかと入ってくる同級生の女の子で
あっという間に父親たちとも仲良くなる。
ある日由紀夫は不登校の同級生宅を訪ねたときにトラブルに巻き込まれてしまう。
とてもいい物語だった。
こんな風に4人も楽しく頼もしい父親がいたら毎日楽しいだろうと思った。
なんといっても父親達は母を深く愛しており、彼女に全面的に信頼を寄せ
絶対的に慕っているのがわかりほほえましい。そしてなんといっても
由紀夫を大切に思い愛するという点において、父親達と母親は強く繋がっている。
由紀夫のピンチを全力でユーモラスに体当たりして、助ける様はとても愉快だ。
他の登場人物も、ギャンブルを闇で仕切る黒い噂の耐えないコワモテの富田林さん
(でも息子を溺愛し、あっさりとオレオレオ詐欺に引っかかったりする)や
もとスポーツ選手で今はしょぼい今川焼き屋の父親を持つ幼馴染の鱒二
(万引きを阻害されて損をしたから損害賠償を請求されて牛蒡みたいな見た目の
男たちに絡まれたりしている)などなかなか面白い。
あまり出番のない母親を含め、みんなキャラクターが個性的で
これは映画化などにぴったりといった感じだ。
誰が誰かななどと考えながら楽しんだ。