- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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妻にドタキャンされて、学生の貧乏旅行以来のバンコクを一人で訪れる片桐。
バンコクの街角でふと入った屋台で津田という青年と知り合う。
津田は今バンコクで働いているというタイ語もできる青年で
ふたりは夜遊びをしたり、食事をしたりと仲がよくなる。
あるとき片桐はミントという女性を津田に紹介される。
留学のために資金を貯めて、知り合いを通じてのみたまに売春のバイトをしているという。
最初は興味を示さなかった片桐だが、いつしか彼女とずっといたいと思うようになり・・
片桐はごく普通の良心的な大人という印象で、ただ飛行機はファーストクラスに乗っていたりして
それがしっくりしない違和感を感じながら読み進む。
津田も感じのいい青年だし、ふたりがはめをはずしてバンコクで遊んでいても
ほほえましくみれるようだったが、だんだんと話は怖い方向へすすむ。
吉田修一の描く男の人はいかにももてそうな魅力的な男性で
最初は好意的に読んでいくのだが、最後はびっくり悪人でというのが怖い。
普通の人が小さなきっかけで犯罪にかかわるようになったり
そちら側に落ちたりなんて簡単なことなんだろうとなんだか怖くなる。
でも全部が悪人になるわけではなく、両親を思いやったり、仏像を見て
「許してください」とつい拝んでしまったり、心が優しいところも
残っていたりして、そっちとこっちを行ったりきたりしている。
普通に見える人もあっと驚く人だったりするなんて
よくあることなのかもしれないと彼の本を読むと思ってしまう。