- 作者: 小川洋子,寺田順三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/04/22
- メディア: 単行本
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子供物には興味のない私だったが、
なんだか小川洋子が読みたくなり図書館で
ぱらぱら見ていたら興味を惹かれて借りてきた。
父を亡くして母子家庭になった岡山に住む朋子は
母が今後の生計を立てるため東京で洋裁の勉強を
一年みっちりすることになる。その間に芦屋にいる
おばさんの家にあづけられることになる。
芦屋の叔母さんはだんなさんはドイツ人とのハーフで
大きな飲料メーカーの社長をしていて豪邸に住んでいる。
初めて芦屋の家を訪ねた朋子には驚くことばかり。
まず格好いい外車で迎えに来てくれたハンサムでかっこいい叔父さん、
ドイツ人のおばあさん、お手伝いの米田さん、雑務をしきる小林さん、
そして朋子よりもすこしだけ年下で人形のように可愛いミーナ。
そして体の弱いミーナが学校に通うのに乗っているかばのポチ子。
出てくるキャラクターはそれぞれに魅力的だし
朋子もミーナもみんないい子で読んでいてもすがすがしいくらいだ。
そこでの生活は70年代初めの生活で、それがまた私にはツボで
ラジオの英語講座の先生がマーシャ・クラカワーだったり
「こっくりさん」が出てきたり、テレビで男子バレーに
夢中になったり(これは私はなかったが)なんだか
風俗が生き生きしていて、とても素敵な時代に見える。
あまりにリアルでこれは誰かの実話が下敷きになっているのだろうかと
思ってしまったほどだ。
とてもいい本で読んでよかったと思える。
読みはじめから、泣く様なシーンでもないのに
私は目をずっと潤ませながら本を読み進めてしまった。
ハーフの叔父さん*1はとてもおしゃれでかっこよく、ユーモアもあり
家族みんなに好かれているのに、実は浮気をしていて
別のところの女性と暮らしていたりしたのだが
その話も朋子のちょっとした勇気ある行動で変化を起こす。
留学中の長男の龍一も大層ハンサムで魅力的な男の子だ。
彼や図書館のお兄さんにほのかに憧れる朋子が
どきどきするようすが愛しく描かれていて
そんな描写をする小川さんはやはりすごいなと思う。