「サウンド・バイツ フランツ・フェルディナンドの世界グルメツアー」

アレックス・カプラノス

サウンド・バイツ―フランツ・フェルディナンドの世界グルメツアー

サウンド・バイツ―フランツ・フェルディナンドの世界グルメツアー


フランツ・フェルディナンドというイギリスのバンドのボーカルの男の子
アレックスの書いた「ガーディアン」で連載したB級グルメの話を集めた本。

グラスゴー出身の超庶民のアレックスだが、父親がギリシア人なので
幼い頃からギリシャ料理にも親しみ、食に対してはオープンな
心の持ち主で、あまり偏見なく、貪欲に食を楽しむ。

ツアーで世界中を旅行して、そこで出会った面白い食べ物や
ツアーのエピソードを紹介してくれるのだが、
彼がごく常識的な感覚の持ち主で、とても素直にいろいろなことを
受け入れる様がすごく好感を持てる。
周りがうろたえるほど臆病者だと自分を紹介しているところも
ユーモアたっぷりで可愛らしい。
そう、可愛らしいのだ、文章が!


ニューヨークのレストランでぐでんぐでんに酔っ払った友達達に
早く追いついて同じテンションで盛り上がりたいのに
出てきたワインがまずい。彼らは酔っ払っているので気付かないが
アレックスはコルクが腐っていると思われるワインを手にとっては
まずくて戻すを繰り返す。でも飲みたい、酔いたい。
でも「堂々とクレームがつけられる機会に限って
クレームをつけるのを避けようとする英国人の血」が抜けていない彼は
どうしてもクレームが言えない。とうとう謝るような口調で
「このワインはこんな味なのかな???」とウエイターに
意を決して言うとウエイターは臭いをかいでさっさと取替え
友人達はそのまま気付かずに飲んでいた。


またアレックスはアメリカ風のカリカリベーコンが好きらしい。
イギリスのは肉肉しい分厚くてピンクのものが主流なのだが
私もいまいちと思っていたので、イギリス人でも
そう思うのかとちょっと安心。


日本の話もちょっと載っている。
日本では「汗を飲むんだぜ」(ポカリスェットのこと)やら
フレッシュネス・バーガーが絶賛されていたり
新幹線で幕の内を食べるシーンもあった。
極ありふれた幕の内と思われる内容だったが
彼らの目を通すと、確かにあまりおいしそうではなく
ちょっと不気味に見える気がしたので外人にはこんな風に
見えるのだな〜と気付いたりした。


この本はアレックスの書く内容はもとより翻訳がよかったと
思う。ロックスターの書く文で下手にオレ様口調で書かれると萎えるし
極普通の男の子のような文でユーモアがありとてもよかった。
実川元子さんの翻訳本がほかにも読みたくなった。