「闇の狩人」池波正太郎

闇の狩人〈上〉 (角川文庫)

闇の狩人〈上〉 (角川文庫)


江戸の盗賊の子頭弥平次は山奥の湯治場で
記憶喪失の若い浪人弥太郎を救う。

時を経て弥太郎は香具師の元締めに
剣の腕を見込まれ仕掛人(刺客)として
江戸の闇に暗躍していた。

彼の身を案じつつ、自らも跡目争いに巻き込まれ
命を狙われる弥平次。弥太郎の記憶を探るため
たどった先には怪しげな武家屋敷が・・・


弥太郎は見た目がとても華奢で頼りない風情で
しかも記憶喪失で可哀相なので
まわりに彼を放っておけないと思わせる。

弥平次も何気なく怪我していた彼を拾ったものの
すっかりと懐かれ頼りにもされてしまい
名前もわからない彼に名前をつけてくれと頼まれ
しかも彼の字を使ってつけてくれと言われる始末。

そんないたいけでしかもみんなが驚くほど素直な彼だが
大変な剣の達人で、香具師に拾われたときも
はじめは単に親切で世話をしてくれた香具師の元締めだったが
そのうち弥太郎を利用するようになってしまう。


そんな中でも弥太郎は弥平次を思って気にしていたが
会うこともないと思っていたのに、ばったり再会してからは
またひな鳥のように懐いてくる様子が可愛い。
仕掛人をしている彼を見かねて自分で引き取りに来た弥平次は
あまりに突然だったし、弥太郎は好きな女もそこでできていたのに
あっさりと素直に弥平次に付いていくことに決心。
お互い命を狙われるような危険な目にあっても
「弥平次どのと一緒なら何が起きても怖くありません」と言い切る。
終いには生まれた息子に弥平次と名前を付けてしまう。


だんだんと明らかになっていく弥太郎の過去の話は
お家騒動がからんでいて、いまいち分かりずらかったが
話も面白かったし、でてくる登場人物も魅力的だ。
女性達も頼りになりしかも優しい人が多くて、
香具師の女房でさえ弥太郎には親切でしかもがらっぱちと
魅力的なキャラだった。