「きみの友だち」重松清

きみの友だち

きみの友だち


学生ものには興味がないお年頃なのだが、
朋ちゃんが映画に出ることになったし、ネットの書評の評判も
よかったので読むことにしたのだが、すごくよかった。


主人公は恵美。子供の頃、傘を忘れた友達が次々と自分の傘に
入ってきたのを疎ましく思い、なんとなくこそを飛び出し、
前を歩いている同級生の女の子の傘に入ろうとしたところを
交通事故にあい、松葉杖生活となる。
友達のことも許せなくて、心を閉ざしていく。
友人達からも疎外されて一人きりになってきた頃
出会ったのが由香だ。彼女は小さな頃から体が悪く
入退院を繰り返すおとなしい女の子で、やはり彼女も輪の外にいる。
いつしか彼女達は大親友になる。


恵美の弟のブンは積極的で、勉強もスポーツも万能の男の子。
いつも一番の彼の前に転向してきた男の子モトは
彼以上にスポーツもでき、勉強もできる。
ふたりは反発しあっていたのだが、やがてよきライバルで
よき親友となっていく。


恵美は無愛想でぶっきらぼう、優しそうなところはないのだが、
ブンや彼の同級生達にはメンターのような存在になっていて
最低限のフォローをするだけで、再生させていっている。
恵美の同級生達も傷ついた羽を休めるように彼女達に近づいては
直ってまた巣立っていく。


恵美とブンを中心に彼らの日常生活のまわりの人々の
ものがたりも一話づつ掬い上げていくのだが、それぞれいい話だ。
一貫して流れているのは恵美と由香の友情で、由香が入院して
ずっと一緒にいれなくても心はしっかりとつながっていて
読んでいると涙が流れてしまう。


中学時代の恵美は今後が心配になるような女の子なのだが
大人になってくるといい具合に力も抜け、世の中とも向き合い
すごくバランスのいいかっこいい大人になっている。
年の離れた弟のブンも素直でとてもいい子だ。
彼は恥ずかしがることなく、なんでも姉に相談するところも
好感が持てるし、ちゃんと姉を思いやっている(誕生日に
使いやすい杖を買ってあげたり、美しい雲を見つけると
その写真を撮り続ける姉に慌てて電話して教えてあげたり)
その様子がとても微笑ましい。


本の中ではイジメや仲間はずれなど思春期の子供にとっては
かなりヘビーな内容が書いてあり、読んでいても
つらいシーンもたくさんあるのだが、
読後はとても穏やかで優しい気持ちになれる本だ。
やはり最後がhappy endingがいいのだ。