「淳之介流 やわらかい約束」村松友視

淳之介流―やわらかい約束

淳之介流―やわらかい約束


「人間・吉行淳之介山本容朗
人間・吉行淳之介 (文春文庫)

人間・吉行淳之介 (文春文庫)


「やわらかい約束」とは、松村が雑誌編集者時代に
吉行になんとか原稿を書いてもらいたいと吉行邸に日参して
いた当時、体調の思わしくない吉行が気乗りしないながらも
情にほだされたのか、対談なら受けてもいいとなった時、
「これはやわらかい約束ということで」と言われたことが
そのままタイトルになっている。


やわらかいは「かたい約束」ではないということで
なんだか彼を表す絶妙の言い回しだ。


吉行の作品よりも人となりに興味を持った私は
さっそくこれらの本を読んでみたが、
彼は思いのほか病漬けで体が弱く大変な人生だったのだが、
心根はとてもすこやかで、可愛げがある性格だ。
しかも優しいので、周りにいる人は彼といるととても
居心地がよくなり、大げさでなくほのかに幸せな気分になるようだ。
彼と悪友の作家達の日々も読んでいて楽しい。


なんだかんだ言っても可愛げのある人は最強だな、男も女も。


四谷怪談の伊右衛門から、吉行のことを「伊右衛門どの」と綽名したという
武田百合子が彼のことをつづった文章も紹介されていたが
愛情のこもったいい文で、武田百合子の本も読みたくなった。