「人ったらし」亀和田武

人ったらし (文春新書)

人ったらし (文春新書)


会ったとたんに惹きつけられてしまう魅力を持った人を
人ったらしと呼び、そんな人々を紹介している。

いろいろな欠陥があっても、にくめない人が多く、
やはりみんなどこか可愛げがあるのが好かれる理由のようだ。

そんな中、吉行淳之介の話にとても興味を持った。
彼は「銀座で一番もてた」という伝説を持っているらしいが
彼の行き着けのバーに彼が行くと電話があり、マダムが
これからいらっしゃるそうですと言うと、
みんなが期待で色めきたったという。
てっきりホステスさんとかかしらと思ったら、
そうではなくて客の男ばかりという。
こんなに同性に愛されている人というのは素敵だ。
「男は隙のない男は好きにならない」ものらしい。


家で麻雀をしている最中に、宮城まり子
「淳ちゃん、脚が寒いの」と言うと、
みんなに「ちょっと待ってくれ」と言って
脚をさすりにいったりするという。


内田裕也にバーで会って、イグレシアスのナタリーを
リクエストして一触即発の危機になった話も
笑い話で終わってとてもチャーミングな人だと思った。


この本を読んで俄然吉行淳之介に興味を持ったので
彼の本を読みたくなった。ダンディズムの人という評判の人らしいが
そんなにかっこいいところでなく、肩の力の抜けた彼の素顔がみたい。


ハンサムや美人でないのにモテル人というのは
自尊心だけを気にして、自分に好感を持って欲しいと考えるよりも先に
相手に積極的にアプローチし、ダメもと精神で進んでいくというのは
今更ながら真実だなと思った。
吉行淳之介はハンサムだったらしいが。