「反転ー闇社会の守護神と呼ばれて」田中森一

反転―闇社会の守護神と呼ばれて

反転―闇社会の守護神と呼ばれて


あんまり実名がばんばんと出てくるので
人事ながらハラハラとしてしまう。

東京地検特捜部の敏腕検事だった彼が
弁護士に転身するやいわゆる闇社会の住人達の弁護を
行い、自身も詐欺罪で起訴されるまでに至る。


彼が検事という仕事にやりがいを感じ生きがいも
感じていただろうことは読んでいても想像に難くない。
この本に書いてあることは多少脚色されていたり
するのかもしれないが、やはり成績というか
ノルマのようなものがあり、自分の都合のいいように
事件を作り上げていくようなことも書いてあり
きっと真実なんだろうなと驚きながらも感じた。


正義感に燃える現場の警察や検事が
おおきな事件のネタを掴んでも、それが大物政治家などの
関与があり、ばれると大変なことになる場合は
ちゃんとしかるべきところから圧力がかかり
捜査は終止符が打たれる。
それってどうなの?と思ったが、検察は国家の安定が
一番守るべきものなので、国がひっくり返ったり
大打撃を受けて混乱したりするなら、むしろ伏せていた方が
国のためという考えのようだ。


著者は大阪地検と東京地検と両方で働きその違いについても
書いているが、とても興味深い。
まず東京はスマートでビジネスライク、ルールに忠実、モラルも守る。
一方の大阪はもっと人間関係が濃く、古風で職人風
取調べで殴るけるは当たり前で清濁併せ呑む印象。
メディアとの接触も東京はいちいち上司に報告義務があるが
大阪ではお互いが利用しあい、著者も記者にご飯を作られたりもしたようだ。


検事も検事なら参考人もしたたかな関西人。
東京ではみんな素直に呼び出されたら出てくるが、
大阪では「なんでわざわざそっちへ行かなあきまへんのや。
電車賃は?日当は?」と参考人聴取になかなか応じないという。
さすがだ関西人!


検事はあまり給料が高くないそうなのだが、
弁護士は恐ろしく儲かるらしい。
バブルだったせいもあると思うが、ものすごい羽振りのよさ!
彼自身もまわりもすごかったようだ。


本の執筆時はまだ裁判中だったが、とうとう彼の有罪も確定したようだ。
新聞にも載っていた。
本当のところはどうなのだろうか?