「きいろいゾウ」 西加奈子

きいろいゾウ

きいろいゾウ


空を飛べる黄色い象は、体が弱くて外に出られない女の子を訪ねて
外の世界に連れ出してくれたが、象は夜が明けるまでに帰らないと
普通の象になってしまう。


東京から引っ越して田舎に住む若い夫婦の夫は無辜歩(むこ・あゆむ)、
妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いムコさん、ツマと呼び合う。
ムコさんは介護施設で働きながら小説を書いており、ツマは動物や木々の
声が聞こえてしまう感受性の持ち主だ。
二人はお互いを大切に慈しみ合い、ぬるくて心地いい田舎の生活を
満喫していたが、ある日ムコさんが彼女を置いて東京へ行ってしまう。
ムコさんの背中には鮮やかな色彩の鳥のタトゥがあり
以前愛して結ばれなかった恋人とも関係があるらしい。


残されて不安で悲しみにくれたツマがある日幽霊に出会い
導かれるように付いて行くと裏山のお墓で遭遇したのは・・・


黄色い象の童話とツマとムコの話が同時に少しずつ進んで行く。
二人のお互いを頼り大切に思う気持ちはとても貴重で
ますます絆が深まる内容なので読後感はいい。
こんな風に愛し合えるのはうらやましいな〜。


田舎に住む祖父母のもとに送られてきた登校拒否児の
男の子がとても美形なのだが、その描写が「きっとこの子を
作るとき、神様はずいぶん暇だったんだろう。ひとつひとつ
丁寧に作ってある」それに対して自分とムコさんは
「いろんな人を作るのに立て込んでて、でーい、これでよい、
さあいけーっ!」と簡単に作られたに違いないというのは
なんだか可愛らしいかにもありそうでおかしい。


また泣き出してしまったツマをみんなが慌ててなだめすかす
シーンがあるのだが、まるで自分が小さな子供になったように
みんなにあやされるのが心地よく幸福で
ますます泣いたというのもとてもよくわかる気持ちだった。


西加奈子は「さくら」がとてもよかったので
他の作品も読んでみたかったがなかなかチャンスがなくて・・
また少しづつ読んでいこう。