「日曜日たち」 吉田修一

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暴力を振るう父親のもとから出て行った母親を
北九州はるばる東京まで探しに行った幼い兄弟。
彼らとささやかなかかわりを持った人々を
その人たちの視線で描く。


彼らが九州から新幹線に乗って出てきたまさにその時、
列車の事故でダイヤが乱れ殺人的に混んだ車内で
違う電車の指定席に間違って乗ってしまった幼い兄弟と
席のことでもめた女性達の物語は、ちょっとほろ苦い。
その後その女性の一人が家に泥棒が入った経緯が
物悲しい。


彼らにたこ焼きをおごった男性やら、
母親の住んでいたアパートを訪ねた兄弟にたまたま出会って
お寿司をおごった初老の男性とその息子、
その母親が元住んでいた部屋に今住んでいる男性、
そしてDVに悩み訪れた自立支援センターで働くことになった女性など
ゆきずりの人々との別々のかかわりがいつしか一つの物語となる。


最後の自立支援センターで兄弟は一時保護されるのだが、
もうちょっと成長したその後の彼らもちょっと描かれるのがいい。


でも子供だけでいても意外となんとかなるのものなんだよな。
世間は思ったほど冷たくないものだと思い出す。