「新釈 走れメロス 他四編」 森見登美彦

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇


山月記、藪の中、走れメロス、桜の森の満開の下、百物語を
森見風に練り直した短編集。

基本は京都の大学生活で、それぞれの物語のエッセンスを抽出。
そして斎藤秀太郎という「読み手のいない文章を一心不乱に書き続け
ドストエフスキー的大長編小説の完成を目指す」一部関係者のみに
勇名を馳せる孤高の学生が、どの話にもゲスト出演している。


私は「メロス」と「桜の森」しか原作は読んだことないのだが
よく内容をうまく練り直して仕上げている気がした。
一番印象的なのはやはり扉の「山月記」だった。
天真爛漫で勉強もでき、麻雀も悠々満喫する永田は
太陽のようにまぶしい男だが、彼とは対照的に暗くて偏屈
そして大変な変わり者の斎藤。彼がある日行方不明になり山に篭り天狗となる。
彼の悲しみや挫折が強烈に心に残った。


どの物語も淡々と楽しく読みやすい展開なのでスイスイ進む。
彼のほかの作品にも手を出してみようかしら?