- 作者: 手嶋龍一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/02/28
- メディア: 単行本
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BBCの東京特派員のスティーブンはイギリスの諜報員でもある。
ある日、本物そっくりの米ドル偽札ウルトラ・ダラーについて
調べるように言われ、それを追ううちに軍事的な陰謀がわかる。
9・11のテロのとき、NHKのワシントン中継で来る日も来る日も
毎日テレビで働かされているちょっとさえない感じのおじさん。
その頃この人は働かされ続けてかわいそうにと思いながら
見ていたものだが、そのおじさんが実は手嶋さんと後から知って
とてもびっくりした。
主人公でストーリー・テラーのスティーブンは
スパイ小説では必ず主役になるような典型的な上流イギリス人。
ユーモアもあり、女性にももて、育ちもよく・・・
幌とフロントガラスの間から雨が吹き込みずぶぬれになりながら
愛車MGBを運転して、手間のかかる恋人のように愛する。
高村薫の小説のようだと思った。
出てくる女性達もかっこいい。
内閣官房副長官の高遠希恵は、柿の種をつまみながら書類を読む。
ものすごく忙しいのに、爪の手入れも行き届き、靴はマロノ・ブラニク。
シークレット・サービスの主任捜査官のオリアナ・ファルコーネ。
彼女も辣腕で、しかも部下達の信頼が厚い。
本の中には実名が出てくる人もあり、いろいろな事件が思い当たり
その背景はこういうことだったのだろうかと思いながら読んだ。
スティーブンの友人で事件を追っているアメリカ人のコリンズ。
オックスフォード時代の友人だが、彼は大英帝国の植民地に育った人のための
ローズ奨学金で入ってきた。ローズ奨学金っていまでもあるのだろうか?