「クローズド・ノート」 雫井脩介

クローズド・ノート

クローズド・ノート


マンドリン部に通う女子大生「香恵」は、引っ越した部屋の片隅で
前の住人のものと思われる日記とその人宛の手紙を見つける。
処分に困りながらもおいておいたが、ある日そっと中身を読むと
小学校の若い女性の先生のものとわかった。不登校の子供に悩み
子供たちと一緒に学び、一方でうまくいかない恋に悩む姿に
だんだんと共感し、自分と重ね合わせていき・・・


最近めっきり京極堂ブームが帰って来て、妖怪ムードの私に届いた
図書館からのリクエスト。最初はなんだかウェッティ〜な恋愛ものの
気分じゃないなと思いながら読み始めたが、恋愛一辺倒でなく
とてもよかった。


まずもって使われている曲が中島みゆきの「時代」とか、「翼をください
そしてさだまさしの「案山子」なんてちょっとつぼをつかれた。
香恵も素直でやさしい女の子だし、親友でアメリカに行ってしまう葉菜も
かっこいい。


文房具屋でバイトをする憧れの女性が、社長の娘で仕事もできてかっこいい
加奈子。相手の人にあわせた万年筆を見立ててどんどんと売ってしまう。
香恵もかなりの万年筆好きで詳しく、二人の万年筆についての会話を
読んでいるもの頼もしく楽しい。「ドルチェ・ヴィータミニ」と
「ミニオプティマ」は見てみたくなる。そして試し書きの言葉は「永遠」
が適切というのも知った。


万年筆を買いに来たイラストレーターの男性に恋をした香恵の物語が
日記の伊吹先生の恋と重ねて進んでいく。展開が読める内容で
そしてその通りに終わるのだが、それでもあまり気にならないのは
恋人の男性もかわいげのある魅力的な男性だし、伊吹先生の生徒との
かかわり方もとてもすばらしく感動的だった。


最後の閉めは「あれ?これで終わり?」ってあっけなかく突然と終わる
印象をもったが、期待値が低かったのか、思いがけずいい作品で
ほかの作品も読んでみたくなった。


そして相手に告白するには、気のある素振りをしたり、気持ちを
ほのめかすようなことをせっせとしてからじゃないと、
そういう目で見てもらえないし、突然聞かれて相手も心の準備が
できないからうまくいかないというのは、今さらながら
新しい真実を知ったような気がしたりして・・・